ネタ下書き
私は本日、それなりに忙しい仕事をソコソコに放り出し
半休を取って友人の話しを聞きに少しだけ値段の高いカラオケ店の一室にいた
やはり禁煙の部屋は居心地が違う、ヤニのニオイがしないだけで相場+2000円の価値は充分に感じた。

前もって店に断りを入れて持ち込みを許可されたケーキを箱から取り出しながら、私は友人にいつでも話しはじめてくれと言った。
彼女はこれから壮大なる失恋話しを始めるのだ。
別れ話しを切り出したのは彼女の方だというのに…。
とは言え、失恋。恋を失ったという意味ならばドチラから振ったにしろ失恋は失恋に違いない。
失恋愛バナシとでも言えば更に適格か?。
私は頭の中でクダラナイ言葉を繋ぎながら、自分が程々に冷めている事を確認した。
失恋愛話しに過剰な同情は禁物なのだ。
目の前の彼女はヒールを脱いで足元を寛げると、いいお値段のケーキを安っぽいプラスチックのフォークでつつき
滑らかなクリームを頬張った。
「…うん。おいし」
「良かった」私は彼女の脳みそが甘いものを得てセロトニンを放出した様を想像してホッとした
「あいつは狡いオトコだったわ」彼女は言った
「アタシ長くは話さないわよ、自己嫌悪にならない程度にして残りの時間は歌うからっ」
彼女の決意表明に私は敬意を表しながら頷いた
「りょーかい」そう言った私の手元からケーキの箱を包んでいた包装紙を取ると、彼女はボールペンでこんなことを書いた
『不器用さ≒愛しさ』
「ほぼ?」私は尋ねる
「限りなくイコールに近かったけれど、本当にイコールだったら別れたり出来なかっただろうから…『≒』なの」
「なるほど」私もケーキを解体しながら彼女に話しの続きを求めた
「あいつは丸儲けオトコなのよ、風邪をこじらせた不摂生が影があるように見えたり、だらしない寝癖が雰囲気イケメンに見えたり…」
私は内心随分些細な所から切り崩してきたな…と思いながらも相槌を欠かさない
「それは…、役者か小説家…詐欺師のたぐいがもつアノ遺伝子ね…」
「そうなの…最悪なパターンとしては心中をせまるような…」
そう言うと彼女はふるふると頭を振った
「あいつはイチからジュウまで不器用だった、それがなんだか凄くサマになってて…」
「うん」
「一緒に眠る時もそうだった、あついはアッチまでからきしで自分だけ先に果てちゃうと申し訳なさそうな顔をして、アタシの胸のあたりに抱きつくの」
「うん」
「そうするとね、アタシ自分が不発に終わった事も忘れて子猫を撫でているような気分にさせられちゃって…」
「…重症ね…」
「だよね…、それでもこのままコノ子のママになってあげてもいいかななんて事も何回も考えたんだ
 それもいいなって何度も思ったんだ」
「絆されちゃったんだ」
「それは見事に」
何故彼女は別れ話しを切り出せたんだろう、そんなに重く人を許してしまった後で
「だけどあいつね、ヒモになるにも不器用で」
彼女は口元だけで笑った
「どんな仕事も続かなくて生活も不器用だったのに、なんかアタシなんかから見たらビックリするような才能があったんだよね」
「…へぇ…なんか意外な展開」
「うん、アタシも驚いた
 だからね、コレは違うなって瞬間的に思ったの。コイツの不器用さは将来解消されちゃうなって」
「うん」
「そしたらあいつのママになるつもりだったアタシは将来不必要になるのが見えたんだ」
「それは・・・立ち直れないね」
「だよねーっ、だから迷わずに別れた訳よ」
「じゃあつまりコレだ・・・」私は言いながら彼女の落書きに一行文字を付け足した
『不器用さ≒愛しさ/悪女の深情け』
「ギャー」彼女は大げさにテーブルにつっぷした
「なのよなのよ、そうなのよ。アタシの情が悪質なのよーっ」
「そしてソコに彼の不器用さからの脱却」私は追い込むように言っていた
「愛しさの崩壊だわ、アタシの情けの行き場は消失よ」
彼女はフォークを加えて弄ぶとだらしない姿のままで言う
「こうして話してる時はいいの、イヤな所も思い出せるし別れた理由も正しかったと思える。
 なのに眠る前には必ずあいつのうなじのニオイが襲ってきて苦しくなる」
「辛いけど…後遺症はしばらくは仕方ないよ」
「あんたは今日も冷たいっ、本当に知り合った頃から今の今まで必要以上に熱かったタメシなしっ」
「うん…ごめん」
彼女は目じりに涙を浮かべながらうっとりするような微笑を返した
「アリガトね、大好きだよ」
「どういたしまして」
彼女はソコからスイッチを見事に切り替えるとカラオケのリモコンを軽快に操作しはじめた。
部屋には賑やかな音楽が流れ始める
私は彼女の言葉に舞い上がる自分の気持ちをなだめながら、グラスの中の氷をかき回す。
カランカランと揺れる氷に呟く、どうか彼女とのこの距離が永遠でありますようにと。
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【2012/07/08 17:09】 | 記憶 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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