常夜の森 その始り
見た本人は汗ダララの恐怖夢
忘れるに忘れられないので覚書
長いので読むのダルイです

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刻々と薄まる夜の闇、朝日が幾筋もの矢の様に延びて
柔らかい眠りを揺り起こし始める頃です。

若い王子は半分夢の中に居ながらも隣に眠っている筈の
愛しいお姫様の温もりを探しました、
ですが指先に触れるのはシーツのサラサラとした手触りばかり…
まだほんのりと暖かな場所に王子の指がたどり着いたとき
王子は鞭で打たれたように、ハッと身を起しました。

王子は姫を探し回りました。
今朝は二人が初めて二人で迎える優しい朝の筈であったのに
王子は蒼白の面に汗を浮かべながら走りました。
城から飛び出し辺りを見渡す王子の目に先祖の眠る山が目に入りました。
その山はそれはそれは険しい山で槍のように尖った頂きに至るまでには
覗くのも恐ろしいような谷があり、いつも寒々しい風が吹いていました。

城から山に続く道に蛆のように蠢く鱗のような物を見つけたとき
王子は全身の血が逆流して行くような感覚に目の前が白むのを感じました。
「お姫様は奪われてしまったよ」
醜い鳥が王子の頭の上で一声そう鳴きました。
王子はその声に突き飛ばされるように一気に山の頂きを目指して走り始めました。
「貪欲な王様たちは、死んだ今も美しい人を奪うよ
 かわいそうに かわいそうに」
醜い鳥は芝居がかったように嘆いて見せてからヒラヒラと空を行きました。

王子は自分の体が傷付くのにも気が付かない様子で只管に頂きに向かって走りました。
その姿に朝露を抱いた花たちも悲しげに首を垂れました。
木々は恐れるように震えました。

深い谷を越え頂きに辿り付いた王子は山の頂きに作られた
祠の中に愛しい人の絹のような髪を数本見ました。
その内何本かは岩肌に飲まれるようにして岩に生え
冷たい風に吹かれていました。
王子は獣のように吼えながら岩に拳を振り下ろしました。
岩を砕く王子の脳裏に昔聞いた物語が蘇ります。

それは王子が幼い時に聞かされた寝物語の一つです
王子の父のそのまた父の幾代も続く王様たちは
朝焼けのように眩しい政で国を治め続けたというのです
王様たちは公平と平和を謳う余りに自らも朝日のようであろうと勤め
時々心に生まれる仄暗い思いを真夜中の星から捕まえた
醜い竜に食べさせてしまっていたのです。
竜が腹を膨らませ、老いて死ぬ頃には国も穏やかに育ち
王様たちも安堵して立派な礎の上に立つだけで良い時代が訪れたのです。
今は昔の物語だけれど忘れてはいけないと何度も聞かされた物語でした。

醜い竜はどこで死んだのか
昔々の王様たちは自分たちの醜い考えを食べさせて
本当にそれで済んでいたのか
王子はそれは嘘だと気がつきました
現にこうして王子のお姫様を奪い飲み込み死んだその身に
醜い欲望を渦巻いているのです

王子は正気を失い血を流しながら命の限りに岩を砕き続けました
岩には僅かな亀裂が生まれ、その亀裂を伝って王子の血は谷底まで落ちました。

すると谷底に横たわる大きな岩が王子の血を吸って地鳴りをさせながら
ズズズと動きました。
それはそれは大きな巨人でした。

その巨人はこの国が生まれるより遥か昔から大地の支柱として
そこに居た巨人でした。
巨人は王子の悲しみと怒りとその血を吸い取り起き上がりました。
巨人が起き上がると、王子が立っていた頂きもその山も全てが崩れ落ちました。
深い谷も今は巨人の足元となりました。
巨人は最初王子の気持ちに呼応するように一声泣きました、
そして天にも届きそうな体を地鳴りと共に進めました。

すると巨人の肩に触れた朝靄が黒い油を伸ばしたように
糸を引きながらそこに闇が生まれました。
巨人の鼻先に触れた雲はオウム貝のようにくるりと渦を描いてから
群青の雲になりました。
朝露に煌いていた花々は小さな星のように姿を変えて
緑の冠を戴いた木々は青黒いビロードのカーテンのようになりました。
巨人は王子の命と悲しみが尽き果てるまで歩を進めました。
巨人が過ぎた後にはそこだけ染め抜いたように闇夜が生まれました、
それはその国の半分の広さにもなりました。

これが常夜の森のその始りです。
常夜の森の果てには苔生した巨人が横たわっています。
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【2005/12/02 09:31】 | 夢日記 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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